陶板美術館 2
すっかり首を痛くした私は、思わずうなだれて背を丸めて床を見ていた。前にはキリストの大肖像画がかぶさっているから、その姿はきっと敬虔な信者に見えたに違いない。
26番のアレキサンダー大王とダリウス大王の戦闘場面のモザイクは見事だった。馬の毛先まで細かな石片で描ききった緻密な作業を想像すると、気が遠くなるほどである。しかもこれを写真撮影してから陶板に写した苦労も並大抵ではないだろう。
というのは、私もかつて仕事でタイルを扱ったので、タイルを焼く工場へ検査に行ったのである。その時に知った技術上の問題はほとんど解決不可能と思われた。
まず、タイルというものは焼成すると粘土の水分が逃げてゆく過程で、サイズが10%ほど縮まるのである。だから、仮に20cmのタイルを作ろうとしたら、22cmくらいで作らなければならない。しかし、正確に10%というのでなく、個体誤差があるので、「だいたい」でやってみるしかない。
次に、高温で焼くから、反りやひねりが発生する。反り返ったものは不良品として除外するのは当然である。
第3に、焼く前と、焼いた後では色が違ってくる。求める色と事前に色づけしたものとは、まるで違う事もしばしばある。
第4に焼いているうちに割れてしまったり、エッジが融けてしまうこともある。冷えてゆく過程で欠けることもある。
これほど難儀な仕事を、巨大な薄い陶板で成し遂げた技術の凄さには感心したのである。
見ることができなかった残り70%の作品を、是非また見に行きたいと思っている。
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